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公開日:2025年2月27日

手のひらにのった家の模型
親が所有するアパートを相続することになり、「そのまま引き継ぐべきか、それとも売却するべきか?」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
アパート経営には家賃収入というメリットがある一方で、維持管理や税負担といったデメリットもあるため、慎重に判断することが大切です。

この記事では、親のアパートを相続するかどうかの判断基準や手続きの流れ、注意点について紹介します。

アパートを相続するメリット

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親からアパートを相続することで、以下のようなメリットが得られます。

賃貸収入を得られる

アパートを相続すると、毎月の家賃収入を得ることができます。具体的な収入額はアパートの部屋数や入居率、賃料相場によって異なりますが、例えば10室のアパートで1室あたり月7万円の家賃を得られれば、満室時には月70万円の収入になります。

ただし、空室が発生すると収入が減るため、安定した収益を得るには適切な管理が必要です。
管理業務が不安な場合は、管理会社に業務を委託することで、入居者募集や家賃回収、設備のメンテナンスなどを任せることができます。
管理費は家賃収入の5~10%が目安ですが、手間をかけずに収益を得られる点は大きなメリットです。

現金よりも相続税が安くなる

不動産の相続税評価額は、市場価格の70〜80%程度となるのが一般的です。
そのため、現金を相続するよりもアパートを相続するほうが、相続税が安くなる可能性が高いです。

さらに、アパートなどの賃貸物件の場合、相続税評価額から借家権割合(全国一律30%)が減額されます。

例えば、市場価格1億円のアパートを相続する場合、 相続税評価額は7,000~8,000万円、 借家権割合適用後の評価額は4,900〜5,600万円となり、現金1億円を相続するよりも大幅な節税につながるのです。

資産価値が上がる可能性がある

アパートの資産価値は、立地や周辺環境の変化によって上がる可能性があります。

特に再開発が進む都市部や交通アクセスの良いエリアでは、地価の上昇や需要の増加に伴い、資産価値が年々上がっていくケースも珍しくありません。

築年数が経過していても、適切なリノベーションを行えば資産価値の維持・向上が期待できます。

アパートを相続するデメリット

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アパートの相続にはメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。 特に相続税の負担や維持費、資産価値の変動リスクについて把握しておくことが重要です。

相続税の負担がかかる

アパートを相続する場合、現金を相続するよりも節税効果はあるものの、相続税が完全になくなるわけではありません。
相続税は、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分にかかります。

例えば、アパートを含めた遺産総額が1億円、法定相続人が2人の場合、基礎控除4,200万円を超えた5,800万円に対して相続税が課せられるのです。

【相続税の税率】

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

出典:国税庁|No.4155相続税の税率

相続税の支払いは、原則として現金一括納付が必要なため、手元資金が不足している場合は、物件の売却やローンの活用を検討する必要があります。

維持費がかかる

アパートを相続して賃貸経営を続ける場合には、以下のような費用がかかります。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 管理費
  • 修繕費
  • 火災保険・地震保険 など

物件管理を管理会社に委託する場合、家賃収入の5~10%を管理費として支払うのが一般的です。
築20年以上のアパートでは、管理費や修繕費のほかに、大規模な修繕が必要になるケースもあるため、注意しましょう。
エレベーターの交換や外壁補修などは、数百万円以上の費用が発生する可能性があります。

アパートを相続するか否かは、将来発生するコストも見越して判断することが大切です。

資産価値が下がる可能性がある

アパートの資産価値は、経年劣化や周辺環境の変化によって下落することがあります。 不動産の資産価値が下がる主な原因は、以下の通りです。

  • 築年数の経過
  • 空室率の増加
  • 周辺環境の変化

アパートは一般的に築20~30年を超えると建物の評価額が大幅に下がる傾向にあり、入居者が集まりにくくなります。
空室率が上がると家賃を下げざるを得なくなり、収益性が悪化するでしょう。

また、地方の物件では需要が低下すると買い手がつかず、売却が難しくなることもあるため、慎重な判断が必要です。

親のアパートを相続したくないときの選択肢は?

家について悩む男女
アパートの相続にはメリットがある一方で、維持管理の負担や相続税の支払いなどのデメリットもあります。
そのため、「親のアパートを相続したくない」とお考えの方もいるでしょう。

続いては、アパートの相続をしたくないときはどうすれば良いのか、考えられる選択肢をいくつか挙げて紹介します。

相続放棄する

相続放棄とは、被相続人である親の財産や負債を一切引き継がないことを指します。

アパートを相続せずに済むため、維持費や管理費、取り壊しのための費用などを負担する必要はありません。
特に借金が多い場合やアパートの維持が難しい場合には有効な手段となるでしょう。

ただし、相続放棄をするとアパートだけでなく、預貯金や有価証券などのプラス資産も相続できなくなります。
また、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出する必要があり、一度放棄すると撤回はできません。

そのため、事前に相続財産のプラス・マイナスを確認し、慎重に判断することが大切です。

他の相続人に譲渡する

相続人が複数いる場合、自分の相続分をほかの相続人に譲渡することができます。

例えば兄弟で相続する場合、アパート経営を続けたい相続人に所有権を譲り、自分は預貯金など別の財産を相続することも可能です。

ただし、他の相続人がアパートを引き継ぐ意思がない場合、遺産分割協議は難航するでしょう。
円満な合意に向けて、しっかりと話し合いを行うことが重要です。

相続前に売却する

親の存命中にアパートを売却してもらい、現金化するという方法もあります。

売却代金は親の老後資金や介護資金に充てることができるため、相続財産を減らすことで相続税対策が可能です。

また、複数の相続人でも分割がしやすい現金であれば、遺産分割協議もスムーズに進むでしょう。

ただし、アパートの売却には親の同意が必要であり、「思い入れがあるアパートを売りたくない」という場合は実行が難しいでしょう。

また、現金は不動産よりも相続税評価額が高くなる点にも注意が必要です。

相続後に売却する

アパートの賃貸経営をしたくない場合、相続が発生した後に売却する方法もあります。

相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに売却が成立すれば、売却代金を納税資金に充てることも可能です。
また、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すれば、「相続税の取得費加算の特例」が適用され、譲渡所得税を軽減できるメリットがあります。

ただし、被相続人が亡くなる直前に購入したアパートを、相続人が相続後すぐに売却する場合、税務署から「相続税回避のための行為」とみなされるリスクがあります。
売却を検討する際には、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

更地にして土地活用する

アパートの築年数が経過している場合には、更地にして土地活用するという選択肢もあります。 土地活用には、以下のような方法があります。

  • 駐車場として貸し出す
  • トランクルームやコインパーキングにする
  • 新たなアパートやマンションを建設する など

ただし、アパートを解体するには高額な費用がかかる点に注意が必要です。 木造アパートで数百万円、鉄筋コンクリート造では1,000万円以上の解体費用が発生することもあります。

また、更地にすると固定資産税の軽減措置が適用されなくなり、税負担が増えることも理解しておきましょう。
事前にコストや税金のシミュレーションを行い、慎重に判断することが求められます。

親のアパートを相続するか否かの判断基準

チェックリストと赤いペン
親のアパートを相続するかどうかは、慎重に判断する必要があります。
不動産は相続後の管理や税金負担が大きいため、事前にリスクや収益性を見極めることが大切です。

続いては、親のアパートを相続するか否かの判断基準を紹介します。

相続税の支払ができるか

アパートを相続する場合、相続税の支払いが必要となります。

相続税の納付期限は相続開始後10ヶ月以内と決まっており、自己資金で支払える場合は問題ありませんが、資金が不足する場合はアパートの一部を売却するか、延納や物納を検討する必要があります。

負担が大きすぎる場合は、相続放棄や売却も視野に入れて慎重に検討しましょう。

維持・管理ができるか

アパートを相続すると、固定資産税や都市計画税の支払い、修繕費、管理費などの維持コストがかかります。
アパートのローンが残っている場合には、その債務も引き継がなければなりません。 築年数が古いアパートでは大規模修繕が必要になることが多く、修繕費が数百万円単位になる可能性もあります。

さらに、管理会社とのやり取りや、確定申告などの事務手続きにおける手間もかかるため、ご自身の生活状況を考慮したうえで、現実的にアパート経営が可能かどうかを慎重に判断することが重要です。

安定した収入が見込めるか

相続後に賃貸経営を続ける場合、家賃収入が安定して見込めるかどうかも判断基準の一つです。
現在の入居率を確認したうえで、駅に近いか、商業施設が充実しているか、周辺の賃貸需要が高いかなどを確認し、将来性を見極めましょう。 地域の家賃相場と比較し、アパートの家賃が適正かどうかも重要なポイントです。

将来的に安定した賃料収入が見込めなくなれば、維持・管理費用の支払いでマイナスとなり、赤字経営となるリスクがあります。

将来的な賃貸市場の見通しを評価したうえで、慎重な判断が求められます。

入居者トラブルの有無

アパートを相続する前に、入居者とのトラブルがないかを調べることも大切です。
長期間家賃を滞納している入居者がいないか、不利な条件で賃貸契約を結んでいないかを確認しましょう。

騒音問題やクレームが多い物件では、管理の負担が大きくなるだけでなく、精神的な負担も増加します。

相続後に想定外のトラブルを抱えないよう、事前にしっかりと確認したうえで、必要に応じて弁護士や管理会社に相談することをおすすめします。

親や家族の意向

相続は自分だけの判断ではなく、親や家族の意向も考慮する必要があります。
特に、兄弟姉妹などの共同相続人がいる場合には、遺産分割の方法を事前に話し合っておくことが重要です。

例えば、兄弟でアパートを共有名義にする場合、管理の手間が増えるだけでなく、将来的に売却の際の合意形成が難しくなる可能性があります。

その場合、売却して現金化したほうが、遺産分割がスムーズかもしれません。

アパートの相続に必要な手続きの流れ

相談している様子
アパートを相続する際には、いくつかの重要な手続きが必要になります。 スムーズに相続を進めるためには、必要な手続きを理解し、期限内に対応することが大切です。

ここでは、アパート相続における具体的な流れを詳しく解説します。

遺産分割協議

まずは、相続人全員で遺産の分け方を決める「遺産分割協議」を行います。
不動産は現金と異なり、単純に分割することが難しいため、相続人の意向を考慮しながら適切な分割方法を選ぶ必要があります。

アパートなどの不動産は、以下の方法で分割するのが一般的です。

現物分割 1人が不動産を単独で相続し、ほかの相続人は現金や預貯金など別の財産を分ける方法
代償分割 1人が不動産を相続し、その代わりに他の相続人へ相応の金銭を支払う方法
共有分割 相続人全員で不動産を共有名義で相続し、持分割合を決めて共同で管理する方法
換価分割 不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法

協議の結果は、「遺産分割協議書」として書面に残し、相続人全員が署名・押印することで法的に有効となります。 これは後の相続登記の際にも必要となるため、正確に作成しておくことが重要です。

相続登記

アパートを相続したら、不動産の名義変更手続きである「相続登記」を行う必要があります。
不動産の所在地を管轄する法務局で申請を行いましょう。

相続登記の申請には、遺産分割協議書、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の住民票などが必要になります。

2024年4月以降、相続登記は義務化されており、「不動産を相続したことを知った日から3年以内」に手続きを行わなければなりません。

金融機関に連絡

被相続人がアパートローンを利用していた場合は、金融機関への連絡が必要です。
特に、団体信用生命保険(団信)に加入している場合、被相続人の死亡により保険金が支払われ、ローンを完済できる可能性があります。

しかし、団信に加入していない場合や、保険金でカバーできなかったローン残債がある場合には、相続人がローン返済を引き継ぐことになります。
資金計画を考慮し、支払いが難しい場合は売却や借り換えを検討することも必要です。

管理会社に連絡

アパートの管理を管理会社に委託している場合は、速やかに相続の旨を伝えましょう。

名義変更の手続きを進めるとともに、管理契約の内容を確認し、今後の管理方針について話し合うことが重要です。

また、管理会社を通じて入居者にもアパートの所有者が変更されたことを通知してもらうと、家賃の支払いや契約内容の確認がスムーズに進みます。

入居者からの問い合わせが発生することも考えられるため、早めの対応が望ましいでしょう。

準確定申告(4ヶ月以内)

被相続人が生前にアパートの家賃収入を得ていた場合、死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について「準確定申告」を行う必要があります。
この申告は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があり、期限を過ぎると延滞税が発生するため注意が必要です。

準確定申告では、被相続人が確定申告をしていた場合の申告書類をもとに、家賃収入や経費を計算し、適切に申告を行います。 税務知識が必要になるため、税理士に相談することをおすすめします。

相続税の納付(10ヶ月以内)

相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。
相続税の計算には、不動産の評価額の算出や各種控除の適用など、専門的な知識が必要となるため、税理士などの専門家に相談しながら進めるのが望ましいでしょう。

期限内に適切な手続きを行わなければ、延滞税や加算税が課せられるため、余裕をもって準備を進めることが大切です。

アパートの相続で注意したいポイント

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アパートを相続する際には、管理や経済的な負担が伴うため、以下のポイントに注意しましょう。

共有名義はトラブルになりやすい

親からアパートを相続する際、複数の相続人で共有名義にすると、物件の売却や修繕、賃貸経営の意思決定をする際に全員の同意が必要となります。

意見が分かれると、物件の管理が滞るリスクが高まり、最悪の場合、経営が立ち行かなくなる可能性もあります。

例えば、建物の修繕が必要になった際に、一部の共有者が費用負担に応じなければ修繕が遅れ、建物の価値が下がるケースもあるでしょう。

大規模修繕のタイミングに注意

アパートは築年数が経過するにつれて設備の劣化が進み、定期的な大規模修繕が必要になります。

一般的に、外壁や屋根、防水工事などの修繕は築12〜15年ごとに行われることが多く、費用は数百万円~数千万円規模になることもあります。

相続のタイミングによっては、すぐに修繕費の支出が必要になる可能性もあるため、物件の修繕履歴を確認し、今後の修繕計画を立てることが重要です。

親のアパートの相続や売却は慎重に検討しよう

アパートを相続することには、家賃収入という安定した収益を得られるメリットや、将来的な資産価値の向上が期待できる魅力があります。しかし、その一方で、相続税の負担や維持管理の手間、修繕費用などのデメリットも無視できません。

こうした要素を踏まえた上で、親のアパートを相続するかどうか、また相続後の賃貸経営を継続するかどうかは、慎重に判断することが重要です。

もし相続後の管理が難しい場合や、資産としての運用に不安がある場合は、売却も選択肢の一つとなります。相続税の納税資金の確保や、将来的なリスクを回避するために、適切なタイミングで売却を検討するのもポイントです。

IPA不動産は、一棟マンションやアパートなどの収益物件の売買を専門に取り扱う不動産会社です。相続したアパートの売却についても豊富な経験を持ち、お客様の状況に合わせた最適な売却プランをご提案いたします。
相続前に売却を検討されている方、または相続後に売却を考えている方も、ぜひお気軽にご相談ください。

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