不動産における抵当権の差押えとは?競売終了までの流れや効力について解説 カテゴリー:マンション売却の知恵袋 公開日:2025年1月7日 最終更新日:2025年2月7日 不動産の差押えとは何か、差押えられてしまった場合どう対処すればいいのか、さらには自分の生活にどのような影響があるのか。 不動産の差押えや競売と聞くと、不安を感じるかもしれません。 当記事では、マンションなどの不動産が競売されるまでの流れ、差押えを解除する方法などを徹底的に解説します。 基本的な知識から具体的な内容まで網羅しているので、最後まで読むことであなたの状況を改善するきっかけが得られるでしょう。 目次1 マンションや不動産における抵当権の差押えとは?1.1 不動産における抵当権の差押えの対象2 不動産の差押えから競売までの流れ2.1 ① 催促状・督促状が届く2.2 ② 債権者からの呼び出し2.3 ③ 残金一括返済を求められる2.4 ④ 保険会社が代わりに一括返済2.5 ⑤ 差押え2.6 ⑥ 競売開始2.7 ⑦ 不動産の引き渡し3 不動産差し押さえの効力とは?3.1 差し押さえられた不動産は自由に処分できなくなる3.2 時効が中断する4 不動産差押えの効力はいつから生じるのか?4.1 競売通知が届いたとき4.2 不動産差押登記がされたとき5 不動産の抵当権の差押えを解除する2つの方法5.1 不動産の差押えを解除する方法①債権者と和解する5.2 不動産の差押えを解除する方法②任意売却を行う6 差押えられた不動産の所有権移転はできるのか?7 マンションなどの不動産が差押えられたらIPA不動産にご相談ください。7.1 マンションや不動産における抵当権の差押えとは? 差押えとは、私的財産の処分が禁止されることです。 差押えにより、債務者が負債の支払いを回避するために財産を隠したり、第三者に移転したりするのを防ぎます。 ローンや税金などが支払えない場合に、債権者が未払いの債務を回収するために行う法的な対応の一つです。 差押えは、債権者にとって最後の手段として使われるため、通常は他の回収方法が失敗した後に考慮されます。 また抵当権とは、お金を貸す側が融資の担保として、借り手の所有する不動産に設定する権利です。 抵当権が設定されると、不動産の所有権は不動産所有者側にありますが、抵当権は貸す側のものとなります。 権利が効果を発揮するのは、借りたお金の返済を滞納してしまったときです。 住宅ローンなどの返済ができない状況になると、抵当権が行使されて残債の代わりにその不動産を差し押さえられてしまいます。 この時、執行するのは債権者ではなく国です。 債権者は返済が滞ったことを裁判所に訴え、裁判所から許可が下りれば対象の物件を差押えできます。 しかし、差し押さえられた不動産は、直接債権者のものとなるものではありません。 不動産における抵当権の差押えの対象 まず、差押えの対象になるものは主に以下のとおりです。 不動産(建物、土地) 家・土地などの不動産は価値が高くて容易に現金化できるため、差押えの対象です。 動産(車、骨董品、貴金属) 車やブランド品、貴金属などの動産も差押えの対象です。 ただし、車が生活や仕事をする上で不可欠な場合は、差押えられません。 預貯金 定期預金や普通預金などの種別に関わりなく、銀行に預けている預貯金はすべて差押えの対象です。 ただし、66万円は2ヵ月分の生活費とみなされ対象から外れます。 また国民年金や厚生年金、生活保護費などの国から支給される資金は差押え禁止となっています。 給与(給料、退職金) 給料や退職金、賞与も差押えの対象です。 ただし差押え可能な額には法律による制限があり、手取り額の1/4とされています。 有価証券 債権、商品券、株券などの有価証券も差押えの対象です。 引用元:国税庁ホームページ 不動産だけではなく、動産や債券など現金に換金できるものは差押えの対象です。 上記で記載したものは基本的に差押えの対象ですが、一定の財産は債務者の生活を守るために差押えが禁止されています。 例えば「1ヵ月分の食料」や「家具・家電などの生活必需品」、「実印・印鑑」、「仕事で必要な物」です。 不動産の差押えから競売までの流れ 不動産が差押えられてから競売が終わるまでの一連の流れは以下の通りです。 催促状・督促状が届く 債権者からの呼び出し 残金一括返済を求められる 保険会社が代わりに一括返済 差押え 競売開始 不動産の引き渡し 一つひとつ説明します。 ① 催促状・督促状が届く 住宅ローンの返済を1ヵ月ほど滞納すると、金融機関から督促状が届きます。 「遅延した分の利息の請求」や「支払いに応じない場合には法的措置を行う」などと記載されており、督促状は返済を催促する書面です。 滞納期間が長期化するほど内容が厳しいものになっていきます。 ② 債権者からの呼び出し 2〜3ヵ月滞納していると、金融機関から電話や書面による催促があります。 返済が難しい場合、支払い計画の再調整や解決方法が議論されます。 ③ 残金一括返済を求められる 半年ほど滞納が続くと、「期限の利益の喪失」に関する書面が届きます。 期限の利益とは分割払いをする権利のことで、喪失すると残金の一括返済を要求されます。 ④ 保険会社が代わりに一括返済 月々の返済を滞納している人が、一括返済できる可能性は低いです。 一括返済できない場合、金融機関は保険会社に「代位弁済通知書」を送付し、残金の一括返済を請求します。代位弁済は、借入の際に保険会社を利用している場合に適用されるものです。 保険会社が一括返済をしたタイミングで、住宅ローンの債権者は金融機関から保険会社へと変わります。債権が保険会社に移管されるため、次から返済を請求するのは保険会社です。 ⑤ 差押え 返済できない場合には、保険会社が裁判所へ差押えの申し立てをします。 「差押予告通知書」が届くと、所有者が不動産の売却や譲渡をするのは不可能です。 ⑥ 競売開始 「差押予告通知書」の送付から1ヵ月後には「競売開始決定通知書」が届きます。 通知書が送付された後に、裁判所は現況調査など競売に向けての準備を進めることになります。 不動産競売は不動産オークションのようなもので、最も高い入札者に売却される仕組みです。 ⑦ 不動産の引き渡し 競売により不動産が売却された後、新しい所有者に対して不動産の引き渡しが行われます。 差押えられた場合でも、すぐに不動産が取り上げられるわけではありません。引き渡しまでには時間があり、その間は引き続き利用できます。 例えば、アパートやその他の収益物件を所有している場合、差押え期間中も家賃収入を受け取ることが可能です。 ただし住宅ローンの返済が滞っている場合には放置せず、速やかに金融機関に相談し、適切な対処法の検討が重要です。 不動産差し押さえの効力とは? 不動産を差押えられた場合の効力は、主に以下の2つです。 不動産を自由に処分できなくなる 時効が中断する それぞれ解説します。 差し押さえられた不動産は自由に処分できなくなる 通常、自分が保有している不動産は、自分の意志で処分できます。 しかし、差押えになっている場合は自由に処分できません。 そして差押えされた不動産は競売にかけられ、最高額で入札した人へ所有権が移転します。 つまり、競売が行われて買う人が決まり、契約を結ぶまでの所有権は自分にありますが、差押えを受けた時点で所有権には制限がかかります。 ですので、新たに所有物件に担保設定をして借入をするのも不可能です。 もし差押えを受けてから不動産を誰かに売ったとして、その後に競売が行われて第三者の別人が買った場合、不動産はどうなるでしょうか? 正解は、「競売で買った人の所有物になる」です。 差押えられている状態で、勝手に不動産を売ることはできないので、売却しても売買契約は無効です。 差押えにともなう強制執行は、貸したお金を確実に回収するために行われます。 効力が強いからこそ、担保の抵当権は信用できるものとなっています。 時効が中断する 借りたお金には、返済期限とは別に時効が決まっており、借入元によって期間が異なります。 例えば、銀行や信用金庫、住宅金融公庫からの住宅ローンでは、業務が営利を目的としているかどうかにより、時効の期間が分かれます。 信用金庫の業務は営利目的とみなされないので商人には該当しません。 その場合、最後の支払いから10年が経過すると時効となります。 同じく住宅金融公庫からのローンも、営利目的ではないので時効は10年です。 一方、銀行は商人に分類されるので、銀行から借りている住宅ローンの場合は5年が時効とされています。 時効は契約時ではなく、最後に返済が行われた時から起算されます。したがって最後の返済から5年が経過すると、返済の要求は不可能です。 しかし、不動産の差押えになると時効は中断されます。 つまり、貸したお金の回収が不能になる事態を防ぐことが可能です。 ですので、差押えがあると催告などが不要になります。 不動産差押えの効力はいつから生じるのか? 差押えの効力が生じるタイミングは決まっており、以下の2つです。 競売通知が届いたとき 差押登記がされたとき いずれか早い方に合わせて効力が生じます。 競売通知が届いたとき 債権者が裁判所に競売の申し立てを行い、申し立てが受理されると、債務者のもとへ「競売開始決定通知書」が届きます。 競売開始決定通知書には、競売がいつ開始されるのかを決定した旨が記載されています。 通知が届いたときが債権者、債務者、そして全関係者に正式に知らされる瞬間です。 裁判所から通知が届いた瞬間に差押えの効力が生じ、不動産は正式に裁判所の管理下に入ります。 以降は競売の準備が進んでいくため、不動産を自由に売買するのは不可能です。 不動産差押登記がされたとき 差押登記は、抵当権を行使して裁判所に競売を申し立て、申し立てが認められたときに行われる登記です。 一定以上の期間返済が滞ったとき、債権者は裁判所への申し立てを行います。 申し立てが裁判所によって受理されると、対象不動産に差押登記が施され、不動産は法的に保護された状態となります。 差押登記が行われた後、不動産はただちに競売にかけられるわけではありません。裁判所は申し立て後、必要な確認作業を行い、確認した内容をもとに競売を開始するか決定します。 ですので、一般的には競売通知よりも差押登記のほうが早いです。 不動産の抵当権の差押えを解除する2つの方法 差押えの申し立てをしている債権者との交渉で、差押えを解消できる可能性があります。 ここでは差押えを解除する方法を2つ紹介します。 不動産の差押えを解除する方法①債権者と和解する 不動産の差押えを解除する方法②任意売却を行う 不動産の差押えを解除する方法①債権者と和解する 住宅ローンを全額返済すれば、差押えを取り消すことができます。しかし、月々の支払いが滞納していることで差押えになっているので、全額返済は不可能でしょう。 そこで提案するのは、債権者と交渉し、返済の条件を再調整する方法です。 返済可能な額を再計算して債権者に提案し、合意が得られれば差押えを解除してもらえる可能性があります。 司法書士や弁護士などの専門家に相談すると、より現実的な返済計画の作成や交渉の代行やアドバイスを求めることが可能です。 債権者が和解に応じるかは保証されていませんが、返済計画をもとに返済する意思があることを債権者に伝えることが大切です。 返済見込みがあることを証明し、支払い期日を明記して分割払いを認めたケースもあります。 不動産の差押えを解除する方法②任意売却を行う 任意売却は競売される前に、自らの意思で不動産を売却する手続きです。 競売は裁判所が介在して行われ、通常は市場価格よりも低い価格で不動産が売却されます。 一方で任意売却は、債務者自身が買い手を見つけるため、よりよい条件での売却が可能です。 ただし、差押えが解除されていなければ任意売却はできません。不動産の売却益を返済に充てることを債権者に伝え、差押えの解除の許可をえることができれば売却可能です。 任意売却は債務者との交渉や専門的な知識が必要になるので、どの不動産会社でも取り扱いできるものではありません。 不動産会社を選ぶ際には、任意売却の専門的な知識と経験をもつ会社を選びましょう。 参考文献:国税庁ホームページ 差押えられた不動産の所有権移転はできるのか? 差押えられた不動産の売買(所有権移転)は可能ですが、現実的には困難です。 なぜなら、購入者にとって差押えにあった不動産を購入するメリットは少ないからです。 例えば、以下のようなデメリットがあります。 不動産登記に差押えの事実が残ってしまう 差押えが解消されない物件は競売にかけられるので、購入者のものにできない ですから、差押登記を抹消しなければ自由に売買できません。 差押登記がされている物件を売却する手順は複雑なため、経験豊富な不動産会社や司法書士、弁護士などの専門家への相談をおすすめします。 また以下の記事では、所有権移転に関して詳しく解説しているので、気になる方はぜひチェックしてください。 関連記事:差し押さえられたマンションは名義変更ができるのか? マンションなどの不動産が差押えられたらIPA不動産にご相談ください。 不動産が差押えられてしまった場合、差押えの効力を知っておくべきです。 そして、効力発生するリスクのあることをしないよう気を付けましょう。 IPA不動産では、差押登記や競売通知がされてしまった不動産でも任意売却で問題を解決させることができます。 当社には任意売却の専門部署があり、専門スタッフがお客様の状況に合わせて最善の解決策を提案します。 不動産を差押えられてしまった場合には、一度お気軽にご相談ください。 この記事のキーワードマンション売却 不動産が差し押えられたら 任意売却 競売